リバーブ
このエフェクトはオーディオの選択部分に自然な反響音を追加します。部屋やホール、講堂、スタジアム、その他の囲まれた部屋の中では、音は何らかの反響を伴って聴こえます。なぜなら音波が壁や床、仕切りの間を前後に反射するからです。巨大なスタジアム内をアナウンスの声がこだまする現象で、この効果はもっともよく知られています。アナウンスの声が最初に聞こえてからしばらくして、あまりはっきりとしないアナウンスの声が反響してくるのが聴こえてきます。リバーブ(反響音)を耳が聞いていたとしても、通常は気にはとまりません。しかしリバーブ無しでは、オーディオは平坦で、乾いた、特徴の無い音になってしまいます。我々の耳はリバーブを利用して、今いる部屋の大きさや形をとらえているのです。
コンピュータのオーディオ信号は、通常リバーブなしで録音されます。楽器から直接録音したり、単一指向性マイクを使ったり、マイクが音源に近かったりすると、信号中にはほとんど(あるいは全く)リバーブは含まれません。オーディオサウンドをより素晴らしくしたければ、リバーブを加えます。
"ルームサイズ" コントロールは、壁面間で跳ね返るのにかかる時間を設定します。このエフェクトでは部屋の形は固定ですが、大きさは変化させられるので、小部屋から大きなスタジアムまでをシミュレートできます。
"減衰時間" コントロールは、壁の間を跳ね返りながら、反響音がどの程度の間聴こえ続けるかを設定します。減衰時間が短いということは、反響音が速やかに消えてしまうということで、減衰時間が長いということは、反響音が長く聴こえ続けるということです。一般的にタイルや石など硬い表面を持ち、家具を置いていない部屋では反射音が生じやすく、反響も長く続きます。カーペットや厚めのカーテンがあり、柔らかい家具でいっぱいの部屋では、ソフトな表面が音を吸収してしまうため、反響はとても短時間で消えてしまいます。
"音質(ローパスフィルタ)" は、音が空気中を伝わり、柔らかめの表面で跳ね返る時に、高い周波数が失われがちになるのをシミュレートします。このオプションは反響音に色付けを行います。
"リバーブ音量" コントロールは、オリジナルの音と比べたリバーブ音の大きさを設定します。リバーブが元の音を圧倒してめちゃめちゃにしてしまわないよう、通常は低いままにしておきます。大きなスタジアムで、何をアナウンスしているのか聞き取れないような、ひどい PA システムの効果を望むのなら、レベルを高く設定します。
リバーブフィルタは、ローパスフィルタを含む 6 種のくし形フィルタと単純なディレイを組み合わせています。"ルームサイズ" パラメータは、各くし形フィルタの遅延時間を調節します。"減衰時間" は各くし形フィルタの音量を調節します。ステレオのファイルでは、両チャンネルに等しく効果がかかります。
くし形フィルタは、入力されたオーディオを一定時間遅らせるタイプのフィルタで、それを自分自身にフィードバックさせます。遅延させたオーディオを自分自身にフィードバックする時、位相が 180°ずれた周波数を相殺するため、くし形フィルタと呼ばれます。このようなフィルタを使った出力の周波数曲線を見るとくしの歯のように見えるからです。